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2.夢
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深夜――――――





「……………っ!?」


がばっ……





「…はぁ、はぁ…は…」



アニスは、蒼白な顔で飛び起きた。

「…やな、夢…」


妙に気持ち悪いと思ったら、部屋着が湿っている。嫌な汗をかいていた。
アニスは、ふぅ、と息をついてから、汗で首に纏わり付いた黒い髪をはらった。

「…こんなに夢見が悪いの、久しぶりだょ…」

イオン様を亡くして以来だ、とアニスは思った。
ふと時計に目をやった。そろそろ日付が変わる頃だ。
運がよければまだ起きているかもしれないと思い、静かに立ち上がると、部屋を後にした。








小さな影が、ひとつの部屋の前に立ち止まる。


コンコン…


「…大佐、あの…起きてますか?」

「…どうぞ」


ギイ…



ジェイドは窓際のチェアに腰掛けていた。



「お仕事、してたんですか?」

「…いえ。先程までは眠っていたのですがね。少し…夢見が悪くて。夜風に当たっていた所です」

「……………!」


アニスは身体を強張らせた。ジェイドが、すぐそれに気付いて声をかける。

「…どうか、しましたか?」

アニスはすぐに身体の硬直を解いて、苦笑いして答えた。

「…大佐も、ですか?」


「え?」

「見たんですか。嫌な夢」

「…えぇまあ。という事は、貴女がこの部屋を訪れたのはそのせいですね。…ちなみにどんな?」

「…大佐が、いなくなる夢。」

「…いなくなる?」

「私がここにいるのに…いっちゃうんです、どこかに。無言で去って行っちゃう…。大佐は歩いているはずなのに、私がどんなに走っても追いつけなくて。呼びかけても、振り向いてくれなくて。まるで、聞こえてないみたいなんです。私の存在に、気付いてない…。大佐が私の声を無視するなんて有り得ないのに。私の声なのに。」

アニスは、最後を呟くように言った。そして涙目を隠すように、黙って俯いた。


「…そう、ですか。偶然ですね。私も似たような夢でしたよ。」

「…似たような、夢。」


「…ええ。」

「……………。」


少し沈黙が続いた後、アニスは一歩、ジェイドに近寄った。
俯いたままジェイドの服の裾を握る。彼は、そんな彼女の身体を引き寄せて、その頭を抱えこんだ。

「…いなくなったり、しませんよね…。」

「何言ってるんです。当たり前ではないですか。」


ジェイドの言葉に、アニスは顔を上げ、懇願するように言った。

「絶対だよ?」

ジェイドは、心配そうに潤んだアニスの瞳を見て、慈しむように微笑んだ。

「勿論です。大体、貴女から離れるなんて考えられない。」

ジェイドはそう言ってから、アニスの唇を指でなぞった。

「…この柔らかな唇も、この黒髪も…この手も」

順にアニスのいたる所にキスを落としていく。
そして最後にもう一度唇を捉えると、深く口付けて、抱きしめた。

「…貴女の全てが、愛しいのに」

ジェイドの言葉に、アニスはくすぐったそうに笑った。

「ふふっ、気障すぎないですか?」

「からかわないで下さい。大真面目なんですから。」

「なんかガイみたいですよ」


「おゃ、心外ですねぇ。真剣に愛を囁いているのに、天然タラシと一緒にされるとは」

二人とも、くすくすと笑い声を漏らした。

「何も心配する事はありませんよ。」

「…はい」

「…貴女を抱きしめる時に感じる、貴女の少し高めの体温が…それだけが、私を安らがせてくれるのですからね。」

「はい。…でも高い体温て…子供扱いじゃないですかぁ」


「気のせいですよ♪」

「ぶーぶー」


ジェイドは可笑しそうに笑った。それから、ベッドを手でぽんぽんと叩いた。

「ほら、よい子は寝る時間ですよ。今晩は傍にいて差し上げますから、もう眠りなさい。明日の戦闘に差し障ります」

「アニスちゃんは悪い子なんですけどね〜。まぁいーや。おやすみなさーい、大佐」


「おやすみ、アニス」


ジェイドはアニスが眠ったのを確認してから、自分も同じベッドに潜り込んだのだった。
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