long
4.待機
1/1ページ目


「…アニスは、どうした?」

「旦那の所だ…側にいてやりたいんだろうな。」

「…まぁ、当然だよな…俺、あんな弱ってるジェイド初めて見た」

ルークの言葉に、その場にいる全員が無言で頷く。部屋の静けさが、事の深刻さを物語っていた。全員というのは、ジェイドとアニス以外の4人のことだ。ノエルはどうしてもアルビオールに調整が必要ということで、今はこの場にいない。4人は、周りに人の見当たらない宿屋のロビーの端で押し黙っていた。


ディストとの戦闘の後、一行はすぐにケテルブルクへ戻った。勿論、ジェイドを医師にみせるため、である。意識のないジェイドの事はガイが担ぐ形で移動させた。メンバーの中で最も長身であるジェイドを担ぐのはガイにも一苦労だったが、仲間の危機的状況の中、弱音を吐くわけがなかった。



ジェイドの意識は、まだ戻っていない。今は、宿屋の一室で横たわっている。ディストの作った薬の前には、医師もお手上げだった。今になって、ディストの科学者としての能力の高さを思い知る。
ディストが言っていたとおり生命に別条はないようだったのは、不幸中の幸いか。


治療――もっとも医師にできる事はほとんどなかったが―――が終わっても、アニスはジェイドの側を離れようとしなかった。弱っている恋人に付き添っていたいと思うのは、当然だろう。ルーク達としてはアニスの事も心配だったのだが―――

『大佐が起きた時近くに誰もいなかったら、病人を放置するなんて皆さん薄情ですねぇーって文句言うに決まってるもん。アニスちゃんがいてあげなきゃね。皆、疲れたでしょ?大佐は私が見てるから、休んでていいよ。ね?』

アニスの有無を言わせぬ言葉の勢いに、また年端もいかぬ少女が不安を隠して笑顔を向ける健気さに、ルーク達は心を打たれ、

『それじゃ、お言葉に甘えるとするよ。ジェイドを頼んだぜ、アニス』

アニスの、こらえきれず瞳から溢れた涙には気付かないふりをして、ルーク達は部屋をあとにした。下手な慰めや同情は、アニスの好むところではない。アニスの涙を止めてやれるのは、彼だけなのだ。


「…痛々しかったですわね、アニスの表情…」

「…そうね。いくらアニスでも、目の前で大佐に倒れられたら…しかもまだ意識戻らなくて、いつ戻るかすらわからないなんて…相当なショックを受けているはずだわ。」

「…大体、ディストの目的は一体何なんだよっ!」

ルークが、憤慨した様子で誰に問うでもなく叫んだ。返事をするのは、ガイ。

「…わからないな。毒が致死量でない時点で、少なくとも殺すつもりはなかったみたいだが。」

ガイはいつもと同じ壁に寄り掛かるポーズで、両腕を組んで首を横に振る。この中で唯一成人しているガイにも、ディストの行動の意図は読めなかった。
しかし、彼が目覚めさえすればそれもわかるのではないだろうか。そんな希望を頭の片隅におきながら、4人はただ固唾を呑んでその目覚めを待つしかなかった。
[指定ページを開く]

章一覧へ

<<重要なお知らせ>>

@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
@peps!・Chip!!は、2024年5月末をもってサービスを終了させていただきます。
詳しくは
@peps!サービス終了のお知らせ
Chip!!サービス終了のお知らせ
をご確認ください。



w友達に教えるw
[ホムペ作成][新着記事]
[編集]
無料ホームページ作成は@peps!
無料ホムペ素材も超充実ァ