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哀願(GN)
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「ガイラルディア伯爵様、そろそろお時間でございます」


俺とナタリアのささやかな幸せの時間は、扉の外のメイドの声によって終わりをつげた。

「…もうこんな時間か。…今度はいつ来られるだろう」

「…ガイ…」

ナタリアが心配そうにこちらを見上げる。
俺も、切なさに耐え切れなくなって、ナタリアを抱きしめた。

「…ガイ、こんな所を誰かに見られたら大変ですわ」

ナタリアは、ガイの背中に腕を回しつつ、諭すように言った。

「…そうだな。周りには、俺達は友人…って事になってるからな…」

「…ええ…」

「俺達の障害は、女性恐怖症だけじゃなかったわけだ。一難去ってまた一難…てな…」


しばらく、沈黙が続いた。少しして俺は、ナタリアをさらにきつく抱きしめる。

「…こんなにも、君の事が…好きなのに」

呻くように、声を絞りだした。

「…私…も…。」

ナタリアは目に涙を浮かべて、ぎゅ、と縋るように抱きしめ返してきた。






お互いの体温が心地よくて、幸せで…切なかった。
俺はマルクトの貴族で、彼女はキムラスカの姫で。
どちらも、家を捨てる訳にはいかなかった。

それでも逢いたくて。
恋しくて…。

愛する人と共にいたいと願うのは、そんなに贅沢な事だろうか?


「…ナタリア、愛してる」

「…私も…愛しています」


深く深く。お互いを確かめ合うように口付けた後、俺は静かに部屋を後にした。



いつの日か
共に歩ける事を
夢見て―――
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