1/1ページ目 「ガイラルディア伯爵様、そろそろお時間でございます」 俺とナタリアのささやかな幸せの時間は、扉の外のメイドの声によって終わりをつげた。 「…もうこんな時間か。…今度はいつ来られるだろう」 「…ガイ…」 ナタリアが心配そうにこちらを見上げる。 俺も、切なさに耐え切れなくなって、ナタリアを抱きしめた。 「…ガイ、こんな所を誰かに見られたら大変ですわ」 ナタリアは、ガイの背中に腕を回しつつ、諭すように言った。 「…そうだな。周りには、俺達は友人…って事になってるからな…」 「…ええ…」 「俺達の障害は、女性恐怖症だけじゃなかったわけだ。一難去ってまた一難…てな…」 しばらく、沈黙が続いた。少しして俺は、ナタリアをさらにきつく抱きしめる。 「…こんなにも、君の事が…好きなのに」 呻くように、声を絞りだした。 「…私…も…。」 ナタリアは目に涙を浮かべて、ぎゅ、と縋るように抱きしめ返してきた。 お互いの体温が心地よくて、幸せで…切なかった。 俺はマルクトの貴族で、彼女はキムラスカの姫で。 どちらも、家を捨てる訳にはいかなかった。 それでも逢いたくて。 恋しくて…。 愛する人と共にいたいと願うのは、そんなに贅沢な事だろうか? 「…ナタリア、愛してる」 「…私も…愛しています」 深く深く。お互いを確かめ合うように口付けた後、俺は静かに部屋を後にした。 いつの日か 共に歩ける事を 夢見て――― <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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