1/1ページ目 「良い夢を、アニス。」 アニスは今日もジェイドと相部屋だ。とれた部屋が3部屋だと、必然的にルークとガイ、ティアとナタリアになる。よって余り者のふたりが相部屋となるのだ。 いつも通りおやすみの挨拶を交わすと、本を広げる大佐を横目に、アニスは眠りについた。 「…………ん」 アニスは寝苦しくて目を覚ました。横を向けば、ジェイドは静かに眠っている。アニスはもう一度眠りにつこうと、目を閉じた。 しばらくして、ばさ、という音がした。アニスは大佐が起きた事を察したが、あえて寝たフリをした。起きている事がわかったら、また子供は寝る時間だとかって嫌味を言われるに決まっているのだ。 大佐に思いを寄せるアニスとしては、子供扱いされるのは実に不愉快だった。 大佐は喉の乾きを癒すために起きたようだった。ベッドから下りてテーブルの上のグラスに水を注ぎ、飲みほす。そして立ち上がりベッドに戻ろうとした。 …その時。 ふいに気配がこちらにやってきた。目をつむっているせいで姿は見えないが、おそらくすぐ近くに大佐がいる。 「…眠っているのですか?」 この男は、なにとぼけた事を言っているのだろう。見ればわかるだろうに。まぁ、実際はたぬき寝入りなのだが。 「黙って寝ている分には、天使なのですがねぇ…」 大佐はそう言いながら私の前髪を優しく撫でた。 可愛がってもらってるみたいなのは嬉しいけど、子供扱いされてる感が否めなくて微妙な気持ちだった。 「…アニス」 名を呼ばれたかと思うと、ふいに唇に柔らかいものが触れた。 これ…今のって…。 理解するのに時間がかかった。 大佐は、寝てる私にキスを落としていったんだ…! なんで、どうして? あんなに子供扱いしてる癖に。 アニスは目を開けたくなる衝動を抑えて、ジェイドがベッドに戻るのを待った。 大佐がベッドに戻ってから、30分くらいたっただろうか。動く気配はない。おそらく眠ったのだ。 アニスはようやく目を開くと、寝返りをうってジェイドの方を向いた。 「………………!」 ばっちり、大佐と目があってしまった…。 彼はしてやったり、という風に微笑みを浮かべている。 この男は、私が起きているのを知ってたんだ!知っててキスして、私が大佐の方を向くのを待ってたんだ。見事に大佐の手の平の上で躍らされていた。 大佐はくす、と笑うと、起き上がって、私の上に乗り上げた。 「やっぱり、起きていましたねアニース♪」 「な、なんのつもりですかぁ? 」 「とぼけないで下さい。わかっているでしょうに」 「う…。えっと…」 「貴女は今、気付いたはずです。私の気持ちに」 「あ、の……」 「気付いてくれるのを、待っていた…。もう、逃がしはしません」 そこまで言われて、大佐が私に好意をもってくれている事はよくわかった。大佐が想っていてくれたのが、嬉しくて胸が高鳴った。 …けどね。 ここで眠り姫みたくキスで目覚めておとなしく大佐の物になったら、アニス・タトリンの名が泣くよ。 大人しく捕まるなんて、あるわけないでしょ? 私は、大佐を押しのけて起き上がると、彼の目を見て、にや、と小悪魔の笑みを向けてやった。 大佐は予想外の私の行動に、珍しく驚いた顔をしている。 「なに、言ってるんですかぁ?大佐…」 わざと甘ったるい声をだして、そのまま腕を大佐の首に回した。 「私が大佐を捕まえたんですよ。逃がしはしません♪」 そこまで聞くと、大佐はふっと笑った。 「おやおや…捕まったのは私でしたか。…こんな風に誘惑されては、逃げられませんねぇ」 「ふぇっ!?誘惑…?」 意外な単語に、うっかり驚いてしまった。それを、大佐が見逃すわけはない。彼は私の表情を見るなり、さっきの私みたいに、にや、と笑った。 あぁ、駄目だ、隙を見せちゃった。こうなってしまったら、私に勝機はない。 「誘惑されたからには、ご希望に答えなければなりませんね…」 「た、大佐…」 「襲って差し上げますよ」 「…っひゃ、あ…!」 大佐は私の首筋に唇を滑らせた後、耳元で囁いた。 「この私に勝とうなんて、10年早いですよ…アニス」 そう。 結局のところ、彼に敵うはずがなかったのだ! だって彼は、ジェイド・カーティスなんだから! fin. <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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