short2
デジャ・ウ゛(JA)
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『あー!先生こんなとこにいたんですかぁ?』


化学実験室の扉を元気よく開いたのは、セーラー服のよく似合っているツインテールの少女だ。

『おや、亜莉紗ですか』

『えへへ』

亜莉紗と呼ばれた少女は、きゅう、と目の前の男の身体に抱き着く。白衣を身に纏った男は、彼女の華奢な背中に優しく腕を回した。

『英斗先生、大好きですよ?』

『ええ、知ってます』

『待ってて下さいね。私が卒業するの。そしたら私、すぐ大人になっちゃうんだから!』

『それはそれは…楽しみですねぇ。でも私は、子供で生徒な貴女も大好きなんですが?』

『先生ってば、不謹慎!教師の言う事ですかぁ、それ?』

英斗と呼ばれた男は、くすくすと笑ってから、少女の前髪を優しくかきあげた。

『ねぇ亜莉紗。ここには貴女と私しかいないというのに、随分と冷たい呼び方をするんですね』


『もう!しょうがない大人なんだからぁ……あ、ねぇ英斗?』

『はい、なんですか?』

名前で呼ばれた事に気を良くした男は、柔らかく微笑んで返事をする。

『…一回聞いてみたかったの。英斗は、どうして私を選んだの?』

随分年下であるのに、しかも教師と生徒というリスクまで冒して。そういった背景が、彼女の言葉には含まれていた。

『…どうして、ですか。どうしてでしょうね。でも、初めて貴女を見たその瞬間直感したんですよ。私の守るべき、愛しい存在は貴女だと。』

『えーっ!じゃあ、英斗は直感と義務感だけで亜莉紗ちゃんの側にいるわけ!?』

『いいえ。亜莉紗が愛しいから側にいるんですよ。』

『むー。よくわかんない!』

『…そうですねぇ。懐かしい感じがした、とでもいいましょうか…。どうやら私は、貴女を探していたようなんです。ずっと、前から。』

『あ!それわかる!亜莉紗ちゃんもねぇ、英斗先生に会った時この人だ!って思ったの!それでやっぱり…』

一度言葉を切って、少女は男の胸に顔を埋めた。

『英斗の腕の中は一番安心できる場所だったよ』

『…嬉しい事を言ってくれますねぇ』

愛していますよ、という囁きと共に額に落とされた柔らかな感触に、少女はくすぐったそうに微笑んだ。






………―――ス

アニ――――ス………




「アニス、起きなさい!」

「…ふみゅ…英斗先生…?」

「?。何寝ぼけているんです。私はエイトではなくてジェイドですよ。」

「…………はぅあ!大佐!?」

「やっと起きましたか。ええ、おはようございます。休憩は終わりですよ。出発の時間です。」

「…はうあ…アニスちゃんてば、うたた寝してたんですか」

「ええ。15分くらい…でしょうか?」

「…そんな短い時間だったんだ」

「一体、何の夢を見ていたんです?随分幸せそうな顔していましたが」

「…過去…未来…?」

「…アニス?」

一人ごとをぶつぶつ呟くアニスに、ジェイドは訝しげな顔をした。そのアニスの瞳が、ふいにジェイドを捉える。

「…大佐。大佐は、この先もずっとアニスちゃんの傍にいてくれますよね?」

「いきなり何ですか。…まぁ、勿論貴女の傍を離れる気はありませんが。」

「ずっとって、いつまでですか?死ぬまで、ですか?」

「ずっとなんですから、ずっとでしょう。期限なんてありません」

「…ずっと?」

「ええ、ずっと」

ジェイドの返答に、アニスはにこぉ、ととろけるように笑顔を見せた。
そのまま、ジェイドに飛びつく。

「じゃあ、生まれ変わっても私の事見つけて下さいね?」

「そうですね、努力しましょう」

アニスは、ふふっと笑うと抱き着く腕に力を込めた。

「…あの夢、未来の事だったらいいな…」

「え?」

「何でもありません!えへへ、大佐だーいすき」

「それはそれは…ありがとうございます、アニス」


ふんわりと唇に落とされる感触に、アニスはくすぐったそうに微笑んだのだった。




――未来の夢だったらいい


だってあれが予知夢なら、大佐が私を見つけてくれる証拠だもんね―――



Fin.
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