1/2ページ目 化学実験室の扉を元気よく開いたのは、セーラー服のよく似合っているツインテールの少女だ。 『おや、亜莉紗ですか』 『えへへ』 亜莉紗と呼ばれた少女は、きゅう、と目の前の男の身体に抱き着く。白衣を身に纏った男は、彼女の華奢な背中に優しく腕を回した。 『英斗先生、大好きですよ?』 『ええ、知ってます』 『待ってて下さいね。私が卒業するの。そしたら私、すぐ大人になっちゃうんだから!』 『それはそれは…楽しみですねぇ。でも私は、子供で生徒な貴女も大好きなんですが?』 『先生ってば、不謹慎!教師の言う事ですかぁ、それ?』 英斗と呼ばれた男は、くすくすと笑ってから、少女の前髪を優しくかきあげた。 『ねぇ亜莉紗。ここには貴女と私しかいないというのに、随分と冷たい呼び方をするんですね』 『もう!しょうがない大人なんだからぁ……あ、ねぇ英斗?』 『はい、なんですか?』 名前で呼ばれた事に気を良くした男は、柔らかく微笑んで返事をする。 『…一回聞いてみたかったの。英斗は、どうして私を選んだの?』 随分年下であるのに、しかも教師と生徒というリスクまで冒して。そういった背景が、彼女の言葉には含まれていた。 『…どうして、ですか。どうしてでしょうね。でも、初めて貴女を見たその瞬間直感したんですよ。私の守るべき、愛しい存在は貴女だと。』 『えーっ!じゃあ、英斗は直感と義務感だけで亜莉紗ちゃんの側にいるわけ!?』 『いいえ。亜莉紗が愛しいから側にいるんですよ。』 『むー。よくわかんない!』 『…そうですねぇ。懐かしい感じがした、とでもいいましょうか…。どうやら私は、貴女を探していたようなんです。ずっと、前から。』 『あ!それわかる!亜莉紗ちゃんもねぇ、英斗先生に会った時この人だ!って思ったの!それでやっぱり…』 一度言葉を切って、少女は男の胸に顔を埋めた。 『英斗の腕の中は一番安心できる場所だったよ』 『…嬉しい事を言ってくれますねぇ』 愛していますよ、という囁きと共に額に落とされた柔らかな感触に、少女はくすぐったそうに微笑んだ。 ………―――ス アニ――――ス……… 「アニス、起きなさい!」 「…ふみゅ…英斗先生…?」 「?。何寝ぼけているんです。私はエイトではなくてジェイドですよ。」 「…………はぅあ!大佐!?」 「やっと起きましたか。ええ、おはようございます。休憩は終わりですよ。出発の時間です。」 「…はうあ…アニスちゃんてば、うたた寝してたんですか」 「ええ。15分くらい…でしょうか?」 「…そんな短い時間だったんだ」 「一体、何の夢を見ていたんです?随分幸せそうな顔していましたが」 「…過去…未来…?」 「…アニス?」 一人ごとをぶつぶつ呟くアニスに、ジェイドは訝しげな顔をした。そのアニスの瞳が、ふいにジェイドを捉える。 「…大佐。大佐は、この先もずっとアニスちゃんの傍にいてくれますよね?」 「いきなり何ですか。…まぁ、勿論貴女の傍を離れる気はありませんが。」 「ずっとって、いつまでですか?死ぬまで、ですか?」 「ずっとなんですから、ずっとでしょう。期限なんてありません」 「…ずっと?」 「ええ、ずっと」 ジェイドの返答に、アニスはにこぉ、ととろけるように笑顔を見せた。 そのまま、ジェイドに飛びつく。 「じゃあ、生まれ変わっても私の事見つけて下さいね?」 「そうですね、努力しましょう」 アニスは、ふふっと笑うと抱き着く腕に力を込めた。 「…あの夢、未来の事だったらいいな…」 「え?」 「何でもありません!えへへ、大佐だーいすき」 「それはそれは…ありがとうございます、アニス」 ふんわりと唇に落とされる感触に、アニスはくすぐったそうに微笑んだのだった。 ――未来の夢だったらいい だってあれが予知夢なら、大佐が私を見つけてくれる証拠だもんね――― Fin. <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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