1/2ページ目 「調子に乗らないで!馬鹿っ」 (…やべ。怒らせた) 同じソファに並んで腰掛けていたティアが、ふいっと顔を背けた。 原因はわかりきっている。俺が、強引にキスしようとしたから。 初めてなわけじゃないけれど、こういう事に関してティアはかなり奥手らしく、なかなかさせてくれない。俺だって恋愛下手だけど、(俺ヘタレだし)ティアはそれ以上だと、最近わかった。 「私、心の準備がいるのよっ…前にも、言ったでしょう?」 「うん、言ってた」 「だったら…!」 「だって、ティアが可愛いから」 「!」 ティアは、完璧に俺に背を向けてしまった。こうなると、打開は難しい。恥ずかしがって、絶対にこちらを向かない。 (さて、どうするか) 「…ティア?」 「…………」 「ティア、こっち向いて?」 「嫌」 (…即答かよ) 長期戦を覚悟した俺は、居住まいをただして、少しティアの方に寄った。もう一度、呼んでみる。 「ティア」 「……嫌」 予想通りの返答に苦笑しつつ、ゆっくり腕をのばす。後ろから柔らかく抱きしめて、彼女が嫌がってない事を確認しながら、その華奢な肩に顎をのせた。 彼女の耳元に、唇を寄せる。 「…ティーア」 ぴく、と肩が反応したのが分かった。顔は見えないけど、耳が赤い。表情が手にとるようにわかる。もうひと押しだ。 今度は、耳たぶに触れる距離。唇を寄せた。 「…ティア」 「……………何よ」 拗ねたような声が聞こえて、俺は口角を上げた。 「こっち、向いて」 少しの沈黙のあと、恐る恐るという感じで、ちら、とティアが視線を寄越した。肩越しに、彼女の蒼い瞳が潤んでいるのが見える。 (あ、顔まっか) こんなふうに恥ずかしがっているティアは、いつもの軍人然とした感じと雰囲気が全く違っていて、余計可愛い。 そんな事を思った自分に重症だなと思いつつ、この機を逃すまいと彼女の頬を優しく包んだ。 「キス、してもいい?」 「や、待って…」 「5秒あげるから、心の準備とかってやつ、して」 「ちょ、ル、ルーク!」 真っ赤になって困惑するティアの顎をくい、と持ち上げて、逃げないように固定した。 「ルーク、待っ…」 「もう、待たない」 しっかり5秒かけて、彼女の唇に自分のそれを重ねた。 fin. <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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