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刹那の名残(GN)
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「ガイ、お休みなさい」

「ああ、お休みナタリア」


挨拶を終えると、ナタリアはガイの部屋をでて自分の部屋へ戻っていった。

ここはベルケンドの宿屋。今日は一人一部屋与えられている。夕食のあと、ふいにナタリアがガイの部屋を訪れ、談笑していたのだ。ナタリアに思いを寄せるガイとしては願ってもないこと。思いがけずナタリアと過ごせて、ご機嫌にベッドの中へ入ったのだった。


深夜―――


キィ…パタン


おそらく隣の部屋だろうか。誰かが部屋をでた音がした。おおかた、用をたしにでもきたのだろう。事実、足音は化粧室の方へ向かっている。ガイは大して気にもとめずに再び寝入った。
パタパタ…

少しして、足音が戻ってきた。用を済ませて部屋に戻るんだな…とガイは浅い意識の中で考えた。









…パサ…



なんだか、暖かい。
急にベッドの中が暖かくなったように思う。

「…ん?」

ガイは寝ぼけながらも違和感を感じ、寝返りをうった。





「………………?!?!」



あまりの驚きに声もあげられない。

なぜ、どうして…









どうしてナタリアがここにいる?


暖かみを感じて寝返りをうってみれば、そこにいたのはナタリア。おそらく、トイレに起きた後、寝ぼけて部屋を間違えたのだ。
寝ぼけて部屋を間違えるとは、可愛いらしいミスではないか。しかし、彼にとっては死活問題。だって彼は、女性恐怖症なのだから。

「う…。まいったな…」

ナタリアに触れない以上、彼女を抱えて部屋へ戻すという事はできない。かといって、幸せそうに熟睡しているナタリアを起こすのも、気がのらなかった。

「どうしたもんか…」

そこで、ガイはああ、と思い付いた。ナタリアを動かせないなら自分が動けば良いのだ。
この寝ぼけようだと、おそらくナタリアの部屋は鍵がかかっていないに違いない。ガイは、部屋を移動するべく身体を起こそうとした。

「……!?」

起き上がれなかった。ナタリアが、きゅっとガイの服の裾を握っている。いくら引っ張っても、離す様子はない。

「冗談だろ…」

ガイは青ざめた。これは彼にしてみれば死刑宣告でしかない。
仕方なくガイは、できる限りナタリアと距離をとってベッドの端に横たわった。
ふと横を見れば、ナタリアはガイの苦悩など知るよしもなく、すやすやと寝息を立てている。

「…まいったな…。今夜は徹夜…だよなぁ」

それでも仮眠をとるべく、ガイは瞼を下ろした。


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