1/2ページ目 英雄とは、なろうとしてなれるものではない。今現在英雄とうたわれる大昔の偉人達には、命と引き換えに何かを成し遂げて、死して後に名を残した人が、多い。 そして今、貴方は皮肉にも望まずして英雄になろうとしている。 その命と引き換えに、世界を救う事によって… 「…ねぇ、ルーク」 「…ん?」 「今も、英雄になりたいって思っている?」 それはティアの、珍しく突然な問い掛け。 「深刻な顔してどうしたんだよ。…そーだな、今はもう、どうでもいいかも。なれたらいいとは思うけどさ…ティア?」 ふと見れば、俯いたティアがルークの袖を掴んでいた。表情は、読み取れない。 「…ならないで」 「え?」 顔を上げたティアの瞳は、潤んでいた。 「…英雄になんて、ならないで……それで…」 “ここにいて” それは、口にはだせなかった。言えば、彼は困った顔をするに決まっているのだから。 ふいに、ティアはルークの腕に包まれた。上から降ってきた言葉は、幻聴だろうか? “ここにいるよ” ルークの顔を見上げれば、優しく微笑まれた。先程の言葉は、本物だったらしい。…けれど。 いつからこんな笑い方をするようになったのだろう? それは、彼を取り巻く状況のせいであって。ティアはそれを思うと胸が痛くなった。 「…あったかいだろ?」 「…え?」 「俺。あったかいだろ」 「…ええ、そうね」 「ここにいるだろ、俺。確かにここにいるよ。だから、そんな顔すんな」 「…うん」 彼の体温は、私を安心させるに充分だった。 大好きな、ルークの温もり。 ――始祖ユリア。 今だけ…今だけ願わせて下さい。 軍人として、人としてあるまじき願い。 なにもいらないから 世界なんて、消えてもいいから これだけは奪わないで 彼の温もりだけは 私からとってゆかないで ここにいて ルーク――――― fin. <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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