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切望(LT)
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――昔とは言い難い、少し昔。英雄になりたい、なるんだと豪語していた貴方。


英雄とは、なろうとしてなれるものではない。今現在英雄とうたわれる大昔の偉人達には、命と引き換えに何かを成し遂げて、死して後に名を残した人が、多い。


そして今、貴方は皮肉にも望まずして英雄になろうとしている。
その命と引き換えに、世界を救う事によって…








「…ねぇ、ルーク」

「…ん?」

「今も、英雄になりたいって思っている?」

それはティアの、珍しく突然な問い掛け。


「深刻な顔してどうしたんだよ。…そーだな、今はもう、どうでもいいかも。なれたらいいとは思うけどさ…ティア?」

ふと見れば、俯いたティアがルークの袖を掴んでいた。表情は、読み取れない。




「…ならないで」

「え?」

顔を上げたティアの瞳は、潤んでいた。



「…英雄になんて、ならないで……それで…」


“ここにいて”



それは、口にはだせなかった。言えば、彼は困った顔をするに決まっているのだから。


ふいに、ティアはルークの腕に包まれた。上から降ってきた言葉は、幻聴だろうか?


“ここにいるよ”


ルークの顔を見上げれば、優しく微笑まれた。先程の言葉は、本物だったらしい。…けれど。


いつからこんな笑い方をするようになったのだろう?


それは、彼を取り巻く状況のせいであって。ティアはそれを思うと胸が痛くなった。



「…あったかいだろ?」

「…え?」

「俺。あったかいだろ」

「…ええ、そうね」

「ここにいるだろ、俺。確かにここにいるよ。だから、そんな顔すんな」

「…うん」


彼の体温は、私を安心させるに充分だった。
大好きな、ルークの温もり。






――始祖ユリア。

今だけ…今だけ願わせて下さい。
軍人として、人としてあるまじき願い。




なにもいらないから
世界なんて、消えてもいいから





これだけは奪わないで






彼の温もりだけは
私からとってゆかないで




ここにいて



ルーク―――――



fin.
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