日記ログ

パーティ
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それは、偶然にもアッシュと宿屋が同じだった夕方の事。

「アッシュ!」

「…なんだ、屑」

「俺、結構前から知りたかった事があって…聞いてもいいかな?」

「…さっさと言え」

ルークのいきなりな発言に、後ろにいた仲間達は顔を見合わせる。一体、何を聞こうというのか。




「イオンの被験者って、どんな奴だったんだ?」

「…何?」

何かと思えばそんな事か屑が!と、アッシュが返答を拒否しようとした、その時。

「そういえば、確かに僕も気になります。教えて下さいアッシュ!」

現・導師イオンに、期待の眼差しで見上げられた。さすがのアッシュも、イオンに向かって屑、とは言えなかった。



…その様子を、面白そうににやにやしながら眺めていやがった腹黒眼鏡とチビにエクスブロードをお見舞いしたくなったのは、ここだけの話だ。



「…わかった。被験者の導師イオンの事、だったな。俺もよくは知らないが…」

「うんうん」





「…腹黒かったらしい」

「「…………。」」

全員、絶句。
アッシュはそれを気にも止めず、続けた。


「ヴァンの事は髭、モースの事は豚と呼んでいた。」

「「…………」」

再び、絶句。
特にティアは大きな衝撃を受けたようだ。
大好きだった兄が髭。尊敬していた上司が、豚…。
ティアの中で、何かがガラガラと音を立てて崩れていった。

「一般市民に対しては穏やかで真白く純粋な導師を演じていたようだが、教団内…特に幹部の人間に対しては…な。」

「ははは…。」

ガイが、苦笑で返した。


「俺が初めて導師にお会いした時は…」




『ねぇヴァン。アンタがいつも後ろにつれてる赤いヒヨコ、誰?』

『…は。名はアッシュ。我が弟子にございます。アッシュ、挨拶しろ』

『…はい。お初にお目にかかります。導師イオン』

『ふ〜ん。アッシュ…灰、ね。灰って呼ぶのと赤ヒヨコって呼ぶのとどっちがいい?』

『……………』



「…という事があった。」

「「…赤ヒヨコって…」」

「…なんだか可愛らしいですわね」

「…ナタリア、しっかりしろ」

突っ込んだのは男性陣だ。

(…私も、可愛いと思うんだけど…)

密かにナタリアに同意したのは、言わずもがな…ティアだった。
そこに、ちょっと待った!と声を上げたのは、アニス。

「赤ヒヨコ云々はどうでもいいけどぉ…話を聞く限りじゃ被験者イオン様ってすごいヒドイ人みたいじゃん。でもアリエッタは“すごく優しい!”って言ってたんだよ?どういう事!」

アニスが矛盾を指摘した。返答は、すぐに返ってきた。

「アリエッタには優しかったんだろう。」

「はぁ?」

「導師はアリエッタを溺愛していた。だから、アリエッタにだけは有り得ないくらい優しかったようだ。」

「…へー。」

「ちなみに、アリエッタを泣かせた人間は、大抵3日以内に任務中に死亡している。」

「…。」

最早、内容を突っ込む気力のある人間はほとんどいなかった。それでも、表面上いつもと変化ない死霊使いは、流石といったところか。

「…結局、被験者のイオン様ってどういう人な訳?」

アニスが、ウンザリしたふうに聞いた。

「…現・導師イオンとシンクとそこの腹黒眼鏡を足して3倍した感じだ」

「…3倍しちゃうんだ…」



ジェイドとイオン以外の仲間達は、この後すぐぐったりとベッドに倒れ込んだそうだ。





「…イオン様、皆さん一体どうしたんでしょうねぇ?被験者イオン様の実態がそんなにショックだったんでしょうか」

「…僕にはよくわかりませんが…。導師の呪いじゃないといいですね♪」

にっこり笑ってそう言ったイオンに、ジェイドはため息をつきたくなった。







流石、導師イオンのレプリカ――――。
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