日記ログ

ジェイアニ
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「…アニース。私の顔に何かついていますか?」

アニスの横に座って本を読んでいたジェイドが、視線を本に向けたままでふいに口を開いた。

「いいえ〜♪」

「でしたら、そんなにじろじろ見ないで頂けると嬉しいのですが?」



そう。ここ数十分、読書中のジェイドはアニスの視線にさらされていた。

「えへ♪大佐は格好良いからずっと眺めていたいなあ〜なんて」

お得意の甘え声で茶化すアニスだが、そんな事ではぐらかされる彼ではない。勿論、そのことは彼女だって百も承知だ。結局白状しなければならない事を知っていて遊んでいるのだから。

「嘘を言いなさい。で、真意は何です?」

ジェイドは、相変わらず本に目を落としたままで切り返す。一枚、頁をはぐった。

「ぶー。…えっとですね〜。大佐って、陛下の懐刀で天下の死霊使いじゃないですか」

「…ええまあ、そうですね。それで?」

ジェイドの返事と共に、再び本の頁をはぐる音がする。




「…だから、大佐の弱点調べられたら裏ルートで高く売れるんじゃないかなあって☆」

「…………。」

3枚目の頁がはぐられる事は、なかった。


「…アニス。つまり貴女は、仲間を売るつもりだった…と」

「…えっへへ♪」


全く反省なしのアニスに、ジェイドは、はあ、とため息をつく。

「…で、見つかったんですか?」

「むー。それがなかなか…大佐って隙ないしぃ〜」

「…教えて差し上げましょうか?」

「…………ふぇ!?」

予想外なジェイドの申し出に、アニスは目を丸くする。そして、ばっと身を乗り出した。

「教えてくださいっ!」

「…知っても貴女にはどうしようもありませんよ?」

「いいですから!」


あくまで姿勢を崩さないアニスに仕方ありませんねと呟くと、ジェイドはぱたんと本を閉じる。
目をキラキラさせているアニスに近づいて、その耳元に唇を寄せた。



「…貴女ですよ」


ジェイドはそのまま彼女のこめかみにちゅ、とやると、クスクス笑いながら部屋を出ていった。






「………え?」


そして部屋には、思考回路がショートした少女がひとり、ぽつんと残された―――
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