1/1ページ目 謁見の間に現れた人物達に、玉座に座っていた皇帝は思わず立ち上がった。 「おぉ!アニスちゃんじゃあないか!また綺麗になったんじゃないかぁ?」 「ご無沙汰してます陛下。お分かりかと思いますが、第二児出産のご報告に参りました。ジェイドは、その…所用ができたみたいで、もう少ししたら来ると…」 そう。現れたのは、皇帝の懐刀の愛妻だ。緩く巻かれた豊かな黒髪を背中に流しており、微笑を浮かべるその姿は大人の色香を漂わせる。腕には、小さな、柔らかい、まだ産まれて数日の女の子が収まっていた。母親似のくりんとした茶色の瞳を、きょろきょろとせわしなく動かしている。人見知りは、しないようだ。 「いい、いい!アイツの顔なんか毎日見てる。アニスちゃんだけで充分だ、てかむしろアニスちゃんだけでいい。いやぁ〜本っ当に綺麗になったなあ」 「いえ、そんな…えへへ」 ふんわりと大人の女性の笑みを浮かべていたアニスだが、ピオニーの賛辞に顔をあどけなく綻ばせた。こんな図をジェイドが見たならひどく冷たい目でピオニーを見遣るのだが、残念(?)ながら彼は今この場にいない。 それを良い事に、ピオニーはよからぬことを言い始める。 「なぁ、そろそろあの堅物にも飽きたんじゃないか?俺に乗り換えちゃいなよ。その子ごと、大歓迎だ」 そう言って、ピオニーがアニスに触れようとした瞬間――扉が開き、閃光が走った! 「かあさまに触るな!イグニートプリズン!!」 「ぎぃやぁあっ!」 「あら、レン?」 開け放たれた扉の前に立っていたのは、アニスとジェイドの長男である、レンだ。父親似の赤茶の瞳を細めて半焦げのピオニーを睨みつけている。軽々と上級譜術を使ってみせたレン、実はまだ4歳だったりする。 その小さな譜術士の背後から、恐らく今世紀最強(凶)であろう譜術士が現れた。 「レン、音素の集め方が甘いですよ。それでは一発で仕留められないでしょう。もっと集中しなさい。」 「あ、とうさま…はぁーい!」 そんな微笑ましい(?)会話を背に、ピオニーがむくりと起き上がった。 「おいジェイド!お前一体どういう教育をしているんだ!皇帝に向けて譜術ぶっ放すなよな」 「おやおや…至って普通に育てているつもりですよ?ただ、アニスに手出しする輩には容赦しなくていいと言ってあります。いやぁ、レンは非常に譜術の飲み込みが早くて。いつか本当に陛下、殺られちゃうかもしれませんねぇ♪」 「ジェイド!お前、この糞根性悪!なぁ、アニスちゃんからもなんか言ってやってくれよ!」 「ジェイド、あんまり滅多な事言わないでよ。陛下怒らせて減給になったら困るでしょ!」 「ちょ、そっちかよ!」 「そういえばそうですね。このくらいにしておきましょうか」 「俺のツッコミは無視!?」 「かあさま、アイツに何もされてない?」 「大丈夫だよ。助けてくれて、ありがと」 「偉かったですよ、レン」 「俺が悪者なのは決定事項ってわけだ…ι」 4歳児にアイツ呼ばわりまでされた不憫な皇帝は、しょんぼりといじけたが、カーティス一家はそれを全く気にかけずに謁見の間を出ていったのだった。 ちなみに、譜術の発動音に対して泣くでもなく平然としていた新生児は、この一家一番の強者かもしれない。(笑) fin. [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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