日記ログ

ジェイアニ(謎の義親子パロ)1
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「アニス、良い子はそろそろ眠る時間ですよ。寝台に入りなさい」

「はぁい、大佐」




ここは、新帝国ニーズホック。もう少し言うなら、帝国一の知力と美貌と譜術能力を持つと言われる天才、かつ死霊使いと称され恐れおののかれる、ジェイド・カーティス大佐の屋敷だ。

たった今彼の傍らでお気に入りの人形をいじっていたのは、彼の部下であるアニス。
彼女には、苗字がない。いや、知らないというのが正しいだろうか。


なぜならアニスは、ジェイドが拾ってきた捨て子だからだ。


それは、まだジェイドが27歳の時。任務で、貧民屈の調査をしていた時だ。この国の貧民屈はまだ他の国よりマシで、生活水準の低い民達でも、小屋のような家にて生活していて、一応家のない民はいなかった。

ジェイドとその部下達は、一軒一軒、家をあたって、人数及び世帯数、生活状況などを調べていたのだけれど。
とある家の扉をノックした時だ。反応がなく、留守か、或いは人はもう住んでいないのかと踵を返そうとした。しかし、その瞬間に、ゆっくりと、ギイ、と音を立てて、扉が開いた。

驚いて振り返ると、そこには、薄汚れた不気味な人形を両手に抱いて、座り込んでいる小さな女の子がいた。顔は土埃で黒っぽく汚れ、二つに結っている髪は大分ほつれてしまっている。

「…だぁれ?」

目が虚ろで、口を開きそうにない子供だと思っていたのに、存外はっきりとした口調で彼女は言葉を発した。
それに対し、ジェイドはすぅ、と頭を下げると、丁寧な口調で問い掛ける。皇帝直属の軍人である以上、子供と言えど一国民に対し不遜な態度をとるわけにはいかなかった。そんな事をすれば、国の品格を落しかねない。

「こんにちは。お父様かお母様は御在宅でしょうか?」

「いないよ」


彼女が即答した事に、ジェイドはひどく驚いた。この小さな子供に在宅という言葉は通じるまいと思いつつ、形式上とりあえずのつもりで用いた言葉だったのだけれど。

「…おや、難しい言葉を知っていますね」

ジェイドが彼女の顔を覗き込んでそう言った瞬間、ぱっと彼女の纏う空気の流れが変わった。その事に、再びジェイドは驚く。

「…しゃっきんとりっていう、変なおじじがずっと来てたの。そいつらが、“お前の親父かお袋さんはざいたくか”って言っていたの。でも、きのうはパパもママもいなかったから、うっかりやっつけちゃった。パパ達がいるときは、びっくりしちゃうからいい子にしてるんだよ。」

「…!?」

“やっつけちゃった”とはどういう事だろうか。言葉のアヤ?いや、こんな子供が妙な言い回しをするはずがない。…では、一体何だ?

「やっつけた、というのは?」

ジェイドが、出来るだけ優しい口調で尋ねる。
彼女は、す、とある方向を指差した。

「あっちでねんねしてるよ。あたしとトクナガで、ぎったぎたにしたもん」


少女の言葉に、ジェイドは思わずばっとそちらを見た。薄暗がりのためによく見えないが、何かがあるのは分かる。ジェイドは失礼しますよ、と一言声をかけると、家の中に足を踏み入れた。

見えていた影に近寄ると、ジェイドは驚愕した。まさか、本当にこれを、あの子供が?

そこには、大柄な男が3人ほど、重ねて積み上げられていた――――。



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