Present
墓穴を掘る少女(JA)
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「ごちそうさまでした、大佐。すごい美味しいお店でしたぁ」

「満足してもらえて、嬉しいですよ。アニス」


ふたりは、ケテルブルクで久々のデートを楽しみ、夕食をたべてからこの町の高台にきていた。


「すごく綺麗ですねー、ここからの眺め」

「そうですか?ここ出身の私としては、貴女の方がずっと綺麗だと思いますよ?特に今日は…ね」


「やだ、大佐ってば何言っ……んっ…」

ジェイドはアニスの言葉を遮ってキスをおとした。
アニスは久しぶりの触れ合いに一瞬うっとりしたが、ふと思いだす。ここは、公衆の面前だ。確かに他にカップルもいるようだが、家族連れもいる。こんな所でラブシーンをする訳にはいかない。流される訳にはいくまい。なんとかして大佐の気をそらさなきゃ!
アニスは、優しい大佐の口づけに恍惚としつつも、そんなことを考えていた。


アニスはゆっくり体を話すと、自然な仕種で景色に目を向け、

「…あ!ね、大佐。あの建物、グランコクマの宮殿に似てますよぅ!」

見事に話題をずらした。

ジェイドは建物を見、にこやかに微笑んで言った。

「…ふむ。確かに、あの破廉恥な愚帝の住家には、似てるかもしれません。」

「破廉恥は関係ないんじゃないですかぁ?」

「大アリですよ。…アニス、あの建物、行ってみますか?


アニスは、ここでラブシーンを続けるよりは歩いた方がいいだろう、彼と白銀の道のりを散歩するのも悪くない…と思い、にっこり笑って、行きたいです、と答えた。


アニスの答えを聞いたジェイドは、アニスの身体を優しく抱き寄せ


「今日の貴女は随分積極的ですね…」

耳元で囁く。

アニスは、ジェイドの甘く低い声に思わずどきりとし、おとなしく身を預けた。
…が、先程の彼の言葉に疑問を抱いたアニスは、ジェイドの背中越しにもう一度景色をみた。




そして、絶句する。

アニスの変化に気付いたジェイドは、くすっ、と笑った。

「おやぁ、やっと分かったようですねえ」

ジェイドは満面の笑みを浮かべている。

「あ、あれって…ら、らぶ…」

そう。アニスが話題変換に使った建物は、ラブホテルだったのだ。ジェイドが宮殿の話をした時に破廉恥な、と言ったのも頷ける。
勿論、ジェイドはアニスが気付いてないことも知っていて、誘ったのだ。

「た、大佐!ハメましたね!?」

「先に言い出したのは貴女ですよ、アニス?」

「はう…」

ジェイドは楽しそうに微笑んだ。

「折角のアニスのお誘いですし、行きましょうか?」

「結構ですよぉっ!宿屋でいいです!」

「ほぅ、宿屋ならいいのですね?」

「はぅあ!ち、違いますよぅ!」

追い詰められたアニスは、ケテルブルクにラブホなんかを作った奴は誰だ、と密かに怨んだ。

「…た、大佐ぁ…」

甘えた声をだしてみるも、きかないようだ。


「アニース 、往生際が悪いですよ♪」


そう言って、ジェイドは手を差し出した。
アニスは、むー、とかいいつつも、彼の手をとった。

「…大佐の意地悪」

アニスはふくれっつらで、それでも幸せそうにぼやき、ジェイドはそんな彼女の手をしっかり握る。


「いい子ですね…」

満足そうに微笑んだ彼は、彼女の唇にそっと口づけた。
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