1/1ページ目 「満足してもらえて、嬉しいですよ。アニス」 ふたりは、ケテルブルクで久々のデートを楽しみ、夕食をたべてからこの町の高台にきていた。 「すごく綺麗ですねー、ここからの眺め」 「そうですか?ここ出身の私としては、貴女の方がずっと綺麗だと思いますよ?特に今日は…ね」 「やだ、大佐ってば何言っ……んっ…」 ジェイドはアニスの言葉を遮ってキスをおとした。 アニスは久しぶりの触れ合いに一瞬うっとりしたが、ふと思いだす。ここは、公衆の面前だ。確かに他にカップルもいるようだが、家族連れもいる。こんな所でラブシーンをする訳にはいかない。流される訳にはいくまい。なんとかして大佐の気をそらさなきゃ! アニスは、優しい大佐の口づけに恍惚としつつも、そんなことを考えていた。 アニスはゆっくり体を話すと、自然な仕種で景色に目を向け、 「…あ!ね、大佐。あの建物、グランコクマの宮殿に似てますよぅ!」 見事に話題をずらした。 ジェイドは建物を見、にこやかに微笑んで言った。 「…ふむ。確かに、あの破廉恥な愚帝の住家には、似てるかもしれません。」 「破廉恥は関係ないんじゃないですかぁ?」 「大アリですよ。…アニス、あの建物、行ってみますか? アニスは、ここでラブシーンを続けるよりは歩いた方がいいだろう、彼と白銀の道のりを散歩するのも悪くない…と思い、にっこり笑って、行きたいです、と答えた。 アニスの答えを聞いたジェイドは、アニスの身体を優しく抱き寄せ 「今日の貴女は随分積極的ですね…」 耳元で囁く。 アニスは、ジェイドの甘く低い声に思わずどきりとし、おとなしく身を預けた。 …が、先程の彼の言葉に疑問を抱いたアニスは、ジェイドの背中越しにもう一度景色をみた。 そして、絶句する。 アニスの変化に気付いたジェイドは、くすっ、と笑った。 「おやぁ、やっと分かったようですねえ」 ジェイドは満面の笑みを浮かべている。 「あ、あれって…ら、らぶ…」 そう。アニスが話題変換に使った建物は、ラブホテルだったのだ。ジェイドが宮殿の話をした時に破廉恥な、と言ったのも頷ける。 勿論、ジェイドはアニスが気付いてないことも知っていて、誘ったのだ。 「た、大佐!ハメましたね!?」 「先に言い出したのは貴女ですよ、アニス?」 「はう…」 ジェイドは楽しそうに微笑んだ。 「折角のアニスのお誘いですし、行きましょうか?」 「結構ですよぉっ!宿屋でいいです!」 「ほぅ、宿屋ならいいのですね?」 「はぅあ!ち、違いますよぅ!」 追い詰められたアニスは、ケテルブルクにラブホなんかを作った奴は誰だ、と密かに怨んだ。 「…た、大佐ぁ…」 甘えた声をだしてみるも、きかないようだ。 「アニース 、往生際が悪いですよ♪」 そう言って、ジェイドは手を差し出した。 アニスは、むー、とかいいつつも、彼の手をとった。 「…大佐の意地悪」 アニスはふくれっつらで、それでも幸せそうにぼやき、ジェイドはそんな彼女の手をしっかり握る。 「いい子ですね…」 満足そうに微笑んだ彼は、彼女の唇にそっと口づけた。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
[編集] |