Present
declaration of war(JA)
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「おやアニス、きていたんですか」

上から降ってきた声にアニスが顔を上げると、そこにはシャワー室からでてきたばかりの男。インナーを着てはいるが首元は緩められており、眼鏡もかけられていない。髪もまだ湿っていて、妙に艶やかだ。
かなり普段と違うジェイドの格好に、アニスはどきり、とした。
かくいうアニスも、すでに入浴を済ませたからか髪を下ろしていて、頬も紅潮している。大人の色香がちらつくその様子はジェイドの心を擽ったが、勿論彼がそれを顔にだすことはなかった。


さて、アニスがジェイドの部屋に遊びにくるのはよくあること。暇をもてあましているから、というのも嘘ではないが、実際はアニスがここにいたいがためだ。少しでも長く好きな人の側にいたいと願うのは、年頃の少女なら当然の事だろう。

「…なんか大佐、色っぽい」

「何を言うかと思えば…一応、ありがとうございます。しかし、男に対して使う言葉ではないと思いますよ?」

くすくすと笑うジェイドを見て、ぷぅ。と膨れてみせてから、アニスは思いついたように言った。

「…大佐の髪、乾かしてみたいな」


突拍子もない事を言い出した挙げ句、だめ?と潤んだ瞳で見上げるアニスに、ジェイドはやれやれと肩をすくめた。






「うわぁ、綺麗…!」

ある程度乾いた髪に指を通せば、さらさらとした金の絹糸が輝く。そこに、部屋に備え付けてあるドライヤーの風を当てる。するとやはり金の髪は美しく舞い上がった。とかす必要はなさそうだったが櫛を通してみると、どこも絡まる事なくすーっと通った。

「…なんか、ずるくないですかぁ?」

「…何がですか?」

ジェイドの顔を覗き込めば、不敵な笑みを浮かべている。アニスの言いたい事をわかっていながらあえてアニスに言わせるのは、ジェイドの常套手段。ささやかな意地悪だったりする。
アニスはむぅ、と頬を膨らませると、ジェイドの質問には答えずに再び髪に触れた。そこで、ふと思い付く。

「…大佐、みつあみしてもいいですかぁ?」

「構いませんが…」

「わーい♪」

ジェイドの返事を聞くなり、アニスは彼の髪を纏め始めた。

「…でーきた♪ふーん、軍服でみつあみな大佐ってなんか新鮮ですね!マントがないから違和感ばりばりって感じかも〜」

「…そうですか?私は特に髪型など、そういう事には頓着しないので気になりませんが…」

「…が?」

アニスが聞き返した瞬間、すっ、と彼の瞳が楽しそうに細められた。
彼は、腕を伸ばすとアニスの髪に触れる。

「…!?」

「…アニスの髪には、興味がありますね」

「ちょっ…いきなり何言い出すんですか」

アニスの動揺を気にする事なく…むしろその反応を楽しそうに見つめるジェイドは、自らの指にアニスの柔らかな髪を絡めた。

「…貴女は散々わたしの髪で遊んだのですから、私にも貴女の髪を弄る権利がありますよね♪」

「……っ!」

要するにギブアンドテイク、といったところか。ジェイドの言う事はもっともなのだが、アニスは真っ赤な表情をごまかすようにじろりとジェイドを見上げる。

「わっ私の髪なんて弄っても楽しくないですよぅ!ごわごわだし、くせっ毛だし…」

「…そうですか?柔らかでとても良い薫りで、私は大好きですよ?」


そう言ってアニスの髪に口づけるジェイドに、アニスは頬を染めた。

(これじゃ…こ、恋人同士みたいじゃんっ!もしかして大佐、私の気持ち知ってて遊んでる…?)

もう一度彼を見上げると、彼はにこ、と柔らかく微笑んでアニスを見た。
その微笑みは、明らかにアニスを慈しむような表情で…とても遊んでいるようには見えない。

遊んでいないとなると、大人の立場から純粋に可愛がってくれているのだろうか?…それとも――――まさか、本気で?



やばいと思ったアニスは、やんわりとジェイドの手を遠ざけ、立ち上がった。

「えっとぉ…良い子は眠る時間なんで、そろそろおいとましまーすっ。」

くるん、と軽快に身体の向きを変えた、その時。

「アニス!」


名前を呼ばれて振り向くと、同時にぐいと腕を引っ張られたアニスは、次の瞬間ジェイドの腕の中にいた。自分を包む香水の薫りが、胸の鼓動を加速させる。

「…あのっ…た、大佐!?///」

混乱するアニスをよそに、ジェイドはアニスの耳元で囁く。

「…覚えておいて下さい。私は、大好きなんですよ。貴女の髪も…貴女自身もね。」

「…っ!」

耳まで真っ赤になったアニスは、ばっとジェイドの腕を振り払うと、おやすみなさいっ!と叫んで走り逃げた。

「…おやおや。逃げられてしまいましたか…」

肩を竦めた彼はふっと微笑み、ですが、と付け足した。


「宣戦布告は、しましたよ」


これからの二人の未来は、今しがた不敵に口角を上げた彼の手腕次第。しかし、彼女が逃げきる可能性はゼロに近い。だって“彼”は、ジェイド・カーティスなのだから!

fin.
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