Present
夢にて得た確証(JA)
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「…はぁ。」


静かな部屋に、男のため息が聞こえた。
ベットに腰掛けているのは、皇帝の懐刀ジェイド・カーティス。長い脚をもつ彼は大概いつも脚を組んで座っているのだが、今日の彼の脚は組まれていない。…いや、組めないといったほうが正しいか。
なぜなら、彼の膝の上には少女の頭が置かれているのだ。その膝の上には、豊かな黒髪が広がっていて。彼女は、すぅすぅと穏やかな寝息をたてている。

「………。」

なんというかもう、呆れてものも言えないとはこういう事を言うのだ、と彼は思う。
密室で、さらに男と二人で。そんな環境で、これなのだから。無防備にも程があるだろう。ため息をつく彼を、責めないで頂きたい。


同じソファーで、それぞれ好き勝手な事をしていただけだったのだ。ジェイドは読書、アニスは例の人形の手入れ…といった風に。
そこまでは良かった。仲間である以上、同じ空間で同じ時間を過ごすこともおかしくはないのだから。

…そう。仲間なのだ。この二人は、(まだ) そういう関係にない。
もう少し言えば、ジェイド・カーティスの片思い。彼の年齢でこの言葉を使うのは些か抵抗があるが、その通りなのだから仕方ないだろう。実のところ、彼は心底彼女を大事に思っていたりするのだ。それはもう、どこぞの皇帝が聞き付けたら大笑いするくらいに。


「…恋人でもない男の膝で、よくもまあ熟睡できるものです。…信用されている、のでしょうか?」

それはそれで喜ばしい事だと思ったが、忘れてはいけない。彼女は、人をすんなり信用するような人間ではないのだ。まして自分のような男に信頼を寄せるだなんて可能性は、ないに等しいはず。

「…信頼でないとしたら、何を寄せているんでしょう」

まさか、好意?
いいや、そんな都合良く行くはずがない。
ジェイドは、自分の立てた仮説を否定する。だが、一方でその仮説を信じてみたいと思う自分がいるのも確かで。

「…ちなみに、私は貴女に好意を寄せていたりするのですよ?同じ思いを返して欲しいと願うのは、人間として至極当然の事だと思うのですがね…どう思います、アニス?」


彼女には聞こえていない事も承知で、質問を投げ掛けた。彼が意味のない事をするのは、珍しいのだけれど。おそらく、秘めている思いを口にだしたかったのだ。隠し事は彼の得意分野だが、我慢は精神衛生上よろしくない。
ジェイドが優しくアニスの髪を撫でると、華奢な肩がぴくりと動いた。


「ん……たい、さぁ…」

「!」

驚くジェイドをよそに、アニスはもぞりと寝返りを打った。彼女は無意識にジェイドの服の裾を掴み直す。

「…金…よこ、せ…」

「…………。」

彼女の可愛らしい口元から零れた言葉に、一体どんな夢を見ているんだと彼は自らの額に手をやった。
しかし、夢とは見ている人間が現実世界で印象に残った事物が現れるものだ。…と、いうことは、彼女にとっての彼の存在はなかなかに大きいものと推測できる。


「…ま、私がでてきたという事で良しとしましょう。ですがアニス、私からガルドをせびろうとした罪は重いですよ。お仕置きです。」


返事をよこさないアニスの唇に、彼はそっと自分のそれを重ねた。


fin.
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