【8018デー記念!】 山本は、立派な扉の前に立っていた。 確か、いつものように応接室のドアを開けようとしたところだったはずだ。 しかし、目の前にあるのは見慣れたそのドアではなく、純和風な家屋の、しかも立派な家に備え付けられているようなものだった。 辺りを見回すと、立派な庭。 しかし、屋外ではないような不思議な場所だった。 「ここ・・・どこだ・・・?」 突然のことに戸惑っていると、不意に背後から声をかけられた。 「君・・・」 振り返ると、よく知った人物の面影を残したが男ひとり立っていた。 「え、っと・・・」 「ここは、10年後の世界だよ」 「へ?」 告げられた言葉の意味がよく分からなかった。 が、しかし、目の前に立つ人物が誰かということだけは、山本にもはっきりと分かった。 「心配しなくても、すぐに見慣れた場所に戻るから」 「そーなのか?」 「そうだよ」 戻れると聞いて安心したからか、その目の前の人物に意識が集中し始めた。 「え、っと・・・ヒバリ・・・さん?だよな?」 「そうだよ」 今、山本の目の前にいる雲雀は、確かに雲雀であることは分かるのだが、それでも知らない人物であるかのようで。 「なんか・・・変な感じがするのな」 「僕が、そんなに変?」 「いや、そういうわけじゃ・・・」 可笑しそうに笑うその表情は未だ見たことがないもので、急に大人になった雲雀に置いて行かれたような気がした山本は、心の奥底に何かわだかまるものを感じた。 「ねぇ、僕のことどう思ってる?」 「え・・・?」 雲雀からの、突然の質問。 「あぁ、この僕じゃなくて、君のよく知ってるほうの僕のことだよ」 面白いものを見つけた、というような目で見つめてくる雲雀の視線に戸惑いながらも、山本はよく知るその人物を思い浮かべる。 「ヒバリ・・・」 「10年前の君は、僕をどう思っていたのか。興味が湧いてね」 「オレは・・・」 答えはなかなか出てこない。 というよりも、靄がかかったように曖昧で見えてこない。 「それじゃあ、10年後のヒバリ、さんはこっちのオレのことどう思ってるんスか?」 「ワオ、質問に質問で返すのかい? いいよ、教えてあげる。 こっちの君には言ってあげないけど、君になら言ってあげてもいいよ。 僕は・・・」 と、その言葉が紡がれる前に山本は白い煙に視界を覆われた。 「残念。聞きそびれたね、僕も、君も」 「何のことだ?」 煙が消えた後に残されていたのは、少年ではなく青年。 「さぁ?」 「いたんだろ?ここに。 10年前のオレが」 「いたよ」 「何話してたんだ?」 「自分に嫉妬?」 「そーじゃねーけどさ、気になるだろ」 「言わないよ」 戻ってきた山本の横を通り過ぎ、家の中に入る雲雀。 「あ、そうだ!」 さも当たり前のようにその後に続いていく山本は何かを思い出して雲雀の腕を掴み、自分の方へと向きなおさせる。 「ひとつ、思い出したことがあるのな」 「何?」 雲雀も山本の顔へと視線を向け、聞き返す。 「今日さ、オレらの記念日だった」 「記念日、ね。 そうだったかな?忘れたよ」 そういって、薄い笑みを浮かべる唇に、山本は自分の唇を重ねた。 きっと、雲雀も思い出したはずだ。 今日は、10年前に二人が恋心を自覚したその日であったことを。 【終】 00:41 コメント(0) [コメントを書く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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