diary2

2022年11月12日(土)
【11/11】
https://youtu.be/B3pq3hkom1A

こちらは、現地サンパウロ時間の11/9に77歳で亡くなったブラジルMPB(ムジカ・ポプラール・ブラジレイラ/ブラジリアン・ポップ・ミュージック)が生んだ最高のシンガー、ガル・コスタを偲んで50年間いやほぼ60年間にわたり、共に活動してきたジルベルト・ジルがアップしたビデオです。

ずっと憧れていたトロピカリズモムーブメントを起こしたブラジルのアーティストたちも、彼らが憧れ受け継いできたバイーアやボサノヴァの人々、ドリヴァル・カイミやジョアン・ジルベルト、アントニオ・カルロス・ジョビンやナラ・レオンのようにこの世界から旅立つ年齢になってきて、にもかかわらず、老齢になってますます歌い続ける音楽を作り続け、その超人的なバイタリティに驚愕させられています。
しかしいつかはやって来るその時は
近づいてきて、まずガルが彼方の世界へ旅立つことになりました。

もう何百回も聴いたガルとカエターノの初めてのデュエットアルバム「ドミンゴ」を聴けば、ガルの美しいすこし可愛らしさと甘美さを漂わせる歌声は、永遠の日曜日の中にたゆたっているでしょう。

僕がガルの歌声に初めて虜になったのは、本格的にカエターノ・ヴェローゾによってブラジルの音楽の世界にのめり込み始めた1990年代の終わり頃でした。

たしかカエターノが名作アルバムを連発していた時代、バイーアの生んだ素晴らしい小説家ジョルジェ・アマードの作品の映画化「チエタ」のオリジナルサウンドトラックの中で歌うガルの歌声でした。

実を言えば日本でのガル・コスタやカエターノ・ヴェローゾの人気は、かなりマニアックなものでした。

もともと日本人はボサノヴァが大好きだったけれども一番有名だったのジョアン・ジルベルトではなくアストラッド・ジルベルトやスタン・ゲッツでした。「イパネマの娘」もジョアンが歌うポルトガル語部分を編集したアストラッドの英語のみのバージョンがラジオでかかったりしていました。
その次に有名だったのセルジオ・メンデスであり、セルメンの大ヒット曲の作者であることで、ジョルジュ・ベンが名前を知られはじめ、1970年代初めに来日公演をした時に、一緒に来日したのがジルベルト・ジルでした。

でも70年代の日本人にはジルがボサノヴァより後にカエターノやマリア・ベタニアやガル・コスタと始めた「トロピカリズモ」のことはほとんど注目されてなくて、それは1980年代後半になってるようやく欧米のロック・アーティストやDJたち、レーベル「ルアカ・ボッブ」のデイビッド・バーンやアート・リンゼイたちが作った傑作コンピレーションアルバム「ベレーザ・トロピカル」によって世界中の新しい音楽の作り手がブラジルのMPBやトロピカリズモを再評価し、自分たちの音楽に取り入れ始めました。リアルタイムで当時の世界的なうねりになっていた記憶があります。当然のように廃盤もしくは日本未発表だったカエターノやジル、ガルのオリジナル・アルバムも全て再発されて、新しい作品が出るたびに注目されるようになりました。


僕はその中でもカエターノの一番最初にどっぷりはまりましたが、カエターノの曲のほとんど半分以上、3分の2というと大げさかもしれませんが、そのくらい頻繁にガル・コスタの歌声は聴こえてきます。二人はほぼ同じグループを組んでいるみたいにすら感じました。

これは二人だけではなくて、
カエターノ・ヴェローゾ
ガル・コスタ
ジルベルト・ジル
マリア・ベタニア
の四人は
ほとんどこの60年間の音楽生活の間、決して離れることない
アーティストの共同体を維持して
彼らの音楽を届けてきたと書いても
それほど間違いではないと思います。

デビューの前から
バイーアの大学生同士で
互いを注目していた
ジルとカエターノ
カエターノの妹で
一番最初に音楽界のスターになった
ベタニア
そしてカエターノの最初の奥さんの
デデーの親友であり
ジルやカエターノと同じくらい
ジョアン・ジルベルトの素晴らしさを
評価して、ジルやカエターノがびっくりするくらい完璧な歌が歌えたのが
マリア・ダ・グラッサこと
ガル・コスタだとカエターノの自伝にはありました。
ジルやカエターノは
彼女をグラッシーニャと呼び、またガル と呼んでいて、それがそのままアーティストネームになったそうです。

カエターノのアルバムを聴きあさり、ジルのアルバムへ行く、そしてかつてのジョビンやジョアンの音楽へ遡って、さらにヴィニシウス・ヂ・モラエスやドリヴァル・カイミやアリ・バホーゾ、ノエル・ホーザまで聴いたりしていくと、もうブラジルの音楽、特に歌の世界の深淵からは逃れられなくなります。

マリア・ベタニア、ナラ・レオン、エリス・レジーナ、ミルトン・ナシメント、シコ・ブアルキ、クアルテート・エン・シーやカルロス・リラ、マルコス・ヴァーリ、ジョルジュ・ベン、ジャヴァン、トッキーニョ、ジョアン・ボスコ、クルビ・ダ・エスキーナ、エルメート・パスコアルやイヴァン・リンス、バーデン・パウエル…

止まらなくなります。リオからサンパウロだけでなく、バイーア、ミナス、さらに北東部のノルデスチなど広大なブラジルには底が見えなくくらい豊富で際限のない音楽が広がっています。

ガル・コスタの
歌声は時に優しく、時に激しく
ボッサのささやきから、パンクの絶叫までなんでもやってのけられる
音楽的キャパシティの広大さを持つ人で、人間離れした表現力の持ち主だと思いますが、僕がガルの歌で一番好きなのは、ふたつあります(一番は決められません!)

1曲は
これまた素晴らしいアーティストの
ジョアン・ドナートの名曲
「アテー・ケン・サービ」
を歌うガル・コスタのバージョン
https://youtu.be/bF_4J0EhzBU

もう1曲は
ジョビン/ヴィニシウスの名曲の中でも一番寂しく
孤独感に胸がかきむしられる
「エストラーダ・ブランカ」
の中でも一番胸がかきむしられる
ガルのバージョンです。
https://youtu.be/XpkgkRktCOc

ああ、突然の訃報に
きっとカエターノやジルや
ベタニアも本当に悲しみの中で
沈んでいるんでしょうね。

(先日引退を発表したミルトンのニュースを見て、他のみんなも最終章へ向かっているんだろうとは感じていましたが…)

一度も生でコンサートを聴いたわけでないのに音源や映像だけでも
これほど感動を与えてくれた
ガル・コスタの魂が
安らかに眠りにつきますように
改めて感謝を込めてお祈りします。
あなたの歌を知ることができた
僕の人生も幸せだったと思います。


11/12^00:21
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