diary3

2024年3月19日(火)
【2024年3月19日】
旅行、旅、というものに
何を重きを置いているかは
人によって違うと思いますが
満足度を図る物差しの問題でもあります。そもそも旅行とか旅は
非日常の空間と時間に
自分を置くことです。
それだけで日常の肉体と精神の疲れが
リフレッシュする。
人によっては
その実感は異文化異言語の環境を
求めて海外へ行くのでしょうし
ショッピングや
グルメを求める
あるいは自然の美しさ
温泉やサウナ
ダイビングやトレッキング
これらは快楽を何によって
得るかのバリエーションだと思うのですが。

文学でいうとケルアックの「路上」とか沢木耕太郎の「深夜特急」というような作品が僕の若い時代には支持されていて、いわば精神の探求、成長を目的とする旅という考え方がありました。

音楽に関係してだと、僕の憧れのフォークシンガーの人たちは、歌いながら遠くの地方まで旅をして暮らすというスタイルにロマンを求める傾向があると思います。これは元々はフォークソングやブルーズ、民謡などは土地に住む人が教わる、あるいは盗むことで広まりました(それが学術研究だとしても採取、採集するということはその場所にあるものを持って帰って分け合うということで、それは必ずしも元々持っていた人々の了解を得たとは限らないのですから、一種の搾取、剽窃だという側面は事実だと思う)
もちろん、旅芸人はそれとは別に芸を披露して廻るのが生業ですから、その擬似体験としての音楽家の旅という側面もあると思います。

前置きが長くなりましたが
今日僕が書きたいことは
「ダークツーリズム」という旅です。
僕の場合、本格的な旅行をする資金力がないので「ダークウォーク」程度にしかならないのかもしれないですが。

1980年代にイギリスの大学の研究者が
その意義を定義したもので、世界中に広まっていく過程でさまざまなサブジャンルに枝分かれしました。
タナトス(死)から来た「タナトツーリズム」「ブラック・ツーリズム」など、その種類はどんどん増えています。いずれにせよ、旅行や観光の目的を人類が起こした人災の跡地、戦争の中で起きた残虐行為の跡地、広島の爆心地やアウシュビッツの跡地、ルワンダのツチ族ジェノサイドが起きた教会などを訪ねてそこで何が起きたかを学ぶことが旅行の目的の一つになる、そういうツアー、ツーリズムのことです。

この考え方は日本の戦争遺跡の保存活動にも影響を与えるもので、僕は2015年に大分県宇佐市の豊の国平和塾という市民グループ主催の宇佐市内の旧海軍航空隊基地の戦跡を歩くピースウォークに参加しましたが、あれもいわばダークツーリズムの考え方から影響を受けたものだと思います。

最初からダークツーリズムに影響されたものではなく、自然に自発的に始めたことではありますが、僕も福岡大空襲の日にライブイベントを始めてからは、犠牲者を祀るお地蔵様を、戦後移転した先まで訪ねて観に行ってみたり、やがて頓田の森の誤爆事件を知ってからは、事件の現場を公園にした場所に通ったり、そこでの追悼イベントに参加したり、それがきっかけで福岡でもライブイベントを企画した後は、作品作り、イベントの取材のために、周辺一帯が広大な軍事拠点であった大刀洗の田園風景を歩き回ったりしました。往復で3時間くらいの距離にあるので旅とは言えない小旅行ですが、この積み重ねが、その後2020年の沖縄の戦跡を歩く旅や、2023年の関東大震災時の朝鮮人虐殺や中国人労働者虐殺事件や亀戸事件、甘粕事件の痕跡を辿る旅に繋がりました。

そしてそれらの旅から学んだ歴史は
それまで自分の中で曖昧に組み立てられていた近現代史の虚構を完全に突き崩すほどのショックをもたらしました。

ただでさえ段々少なくなっていた
日本の戦争の歴史、平和教育で
とりこぼされてきた視点、日本の戦争加害、それは差別意識に基づく極めて深刻な人権侵害をたくさん含んでいたこと。それを覆い隠すために戦後歴史教育は戦前戦中の流れを汲む権力側から様々な圧力をかけられ、歴史改ざんや隠蔽を受け入れてしまうことになります。政府や軍部が組織的に行った敗戦直前の大規模な公文書の廃棄焼却処分、戦争犯罪の証拠となるものの廃棄隠蔽工作も、その加害の歴史を解明できなくして、歴史否定を行うことを可能にしています。

長い間、足を運んで
歩いたりして
朝倉の、大刀洗の、頓田の、土地は
平和への祈りの場所だと
思い込もうとしていましたが
いま誇らしげに貼られた防衛省、自衛隊のポスターやかつての航空基地の地形をそのまま生かした巨大なレーダー施設、隣の小郡にも大きな基地があり
地元の人たちがその繋がりを大切に
むしろ軍都へ回帰することへの
ノスタルジーを抱いているようにすら
感じます。それはかつての航空軍事基地の歴史を肯定的に記載するさまざまな碑文や説明板があることをみても明らかに感じられること。
無論それはこの地域の保守政党を支持する、あるいは自衛隊を積極的に受け入れることで地域が経済的に潤うことを望む人たちの話であり、少なくない市民はもう軍都ではなく平和な地域が
続くことを望んでいると信じたいですが、それならばまずこの地域の人たち自身が、もっと別の意思を持つこと、軍都を復活させるようなまちづくりを拒否する姿勢を示していかなければ、変化はないと思います。
それは難しいでしょう。なぜなら
福岡県という自治体は全域にわたって
有事の際の重点区域に指定されているほか、南西諸島の住民の方々の避難受け入れ先にもなるわけで、しかも
県民には政府の、防衛省や自衛隊の
受け入れに反対するのは少数派なのですから。

最初の数年は通うたびに、この地域の自然の美しい風景の魅力と風化させてはいけない戦争の惨劇、特に子供達を巻き込んでしまった悲しい出来事を記憶しようという義憤とで、訪れるのが楽しみでしたが、最近の5年間くらいは急速に進んでいく有事体制と軍都回帰の方向性、かつての戦争協力を再評価するような平和祈念館の展示などに、違和感ばかりを覚えるようになり、訪れるのが辛い気持ちになることが多くなりました。
今回も旧大刀洗陸軍航空隊北飛行場の痕跡を辿るのに歩き疲れて、ふと広大な景色の中にかつての戦闘機の掩体壕が保存されているのを見つけたとき、僕はつい口に出して独り言を言ってしまいました。
掩体壕なんか残してどうすんだよ、
もしかしてまた使うつもりかよ、沖縄と同じように、またこの町も、国に昔の軍事拠点の役割を押し付けられるつもりかよ、戦争なんかどうでもいい、やりたいやつらだけで、勝手にやれよ、と。

僕は筑前町安野地区に
建設された大刀洗北飛行場に駆り出された朝鮮人徴用労働者の歴史を、彼らの飯場があったという場所を探して歩いてみたのでした。
これは当時戦争末期に全国の軍事拠点において、朝鮮人徴用労働者がインフラ整備を担わされた、つまり半強制的に従事させられた事実が、この大刀洗でも行われたことを意味しています。
これは戦後79年経った今日でも大きな意味を持つ社会問題です。
昨年京都府宇治市の旧京都飛行場の建設現場の朝鮮人飯場から始まったウトロ地区に「ウトロ平和記念館」が開館しました。

山口県宇部市の宇部興産に近い長生炭鉱跡地では、落盤事故で水死した海底炭鉱の朝鮮人坑夫たちの遺骨収拾を求める運動が続いています。

群馬県高崎市では旧中島飛行機など
軍需工場で徴用され死亡した朝鮮人徴用労働者の慰霊碑が、右翼団体、歴史否定論者のグループの圧力で、行政代執行で強制的に破壊、撤去される事件がありました。

戦争末期に、ソ連の参戦に備え青森県下北半島の大湊警備府で急ピッチで進められた要塞化工事に従事させられた朝鮮人徴用労働者とその家族数千人を秘密裏に敗戦の直後に急いで朝鮮半島に帰国させる目的で、チャーターされた輸送船「浮島丸」が京都舞鶴湾で謎の爆沈をして約600人、実際は2、3000人が犠牲になったのではないかと言われている事故を起こしましたが、これは軍部が戦犯追及を恐れ証拠隠滅を急ぐあまり、引き起こした事故、あるいは自沈事故ではないかと、当初から疑われた事件です。しかしやはり完全に秘密裏に処理され歴史の闇に葬りさられてしまい、現在でもその追悼式と真相究明を求める運動をする人々がいます。

同様に福岡の大刀洗の安野地区にも
過去の朝鮮人徴用の歴史を記すものは一切残されていませんでした。
そこにあるのは戦後軍用地に入植し農地への開拓した人々への礼賛の記念碑、そして朝鮮人徴用に一言も言及しない説明板でした。僕は心底うんざりしてしまいました。

僕を含む戦後の歴史教育を受けてきた日本人の多くが、このように
加害責任をうやむやにした、都合の悪い部分を取り除いた、虚構の歴史を信じてきた、歴史認識、歴史観を育んでしまった可能性が大きいと思います。

その歪んだ歴史認識を学び直すこと、は戦後79年のあまりにも長い時の流れの後だとしても、まだ遅くはないし、やらねばならないことです。

なぜならば、2024年の現在が
次なる戦争へと繋がる政府の暗躍、防衛省、自衛隊の前のめりな姿勢が強まっている状況にあり、なおかつ政府にや政府を後押しする軍事ビジネス大企業に忖度を繰り返し、批判精神を失ったマスメディアによる事実を捻じ曲げる報道、日本に都合の悪い事実は現在の問題も歴史的な問題でもひたすら否定し、それを伝える人を攻撃しヘイトスピーチを浴びせるような言論環境にあるからです。

この状況の中で、冷静に客観的に、状況判断、情勢分析をする力、そして常に一番弱い立場にある人たちの視点に立って、思考する、学ぶ、自分の意見や対処を考えること、いわば戦後教育、現在の教育に決定的に不足していると言われる「主権者教育」を自分で学び直すこと、マスメディアの偏向した報道へのリテラシーを高め、自分自身を守ることに繋がります。

偽りの歴史に未来を積み上げていくと、必ずどこかでそれが崩れ去るのではないでしょうか。それを見抜けず、偽りに加担する人の存在も人生も同じく崩壊するでしょう。このままだと
この国は1945年と同じかより酷い様相で崩壊する、
その危機感を強く感じています。


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